いわき信用組合の不正 取引先憤り

いわき信用組合の不正 取引先憤り 「預金消失」の恐怖…顧客データ売却の疑いも浮上

福島県いわき市を拠点とする「いわき信用組合」で、大規模な不正取引が発覚し、地元企業や個人顧客から怒りの声が噴出している。内部告発により明らかになった不正の内容は、単なる資金流用を超え、顧客の預金消失や個人データの外部流出まで及ぶ可能性が指摘されており、地域経済に深刻な打撃を与える事態となっている。

「通帳残高がゼロに」 不可解な預金消失が多発

問題が表面化したのは2024年5月初旬。複数の顧客から「預金が不正に引き出されている」との苦情が相次いだ。中には老後の生活資金として預けていた2000万円が一夜にして消えていたというケースも報告されている。

「先月までは普通に残高が確認できていたのに、今月の通帳更新をしたらゼロ円になっていた。信用組合からは『システムエラー』との説明しかない」と、70代の男性顧客は声を震わせる。

金融ジャーナリストの田中浩一氏は「ここまで大規模な預金消失が起きる背景には、組織的な資金の横領があると考えるのが自然だ。内部統制が完全に機能していなかった可能性が高い」と指摘する。

闇取引の疑い 顧客データが海外流出?

さらに深刻なのは、顧客の個人情報が闇市場で取引されていたとする証言だ。元行員のA氏(匿名希望)によれば、「特定の部署では顧客データをUSBにコピーし、外部との不審な接触があった」という。

サイバーセキュリティ専門家の伊藤真由美教授は「過去1年間で、いわき市内の住民を狙ったフィッシング詐欺が急増している。この信用組合の顧客データが流出源となっている可能性は否定できない」と警鐘を鳴らす。

「倒産の可能性も」 地域経済への波及懸念

いわき信用組合は地元中小企業への融資でも重要な役割を果たしてきた。しかし、不正発覚後、取引先企業の間では資金繰りへの不安が広がっている。

「当社の運転資金は全てこの信用組合に依存していた。もしここが破綻すれば、我々も共倒れだ」と、地元製造業の経営者は顔を曇らせる。

金融庁は緊急検査に乗り出したが、内部関係者は「不正の全容解明には数ヶ月を要する」と語り、事態の深刻さを物語っている。

最悪のシナリオ 預金保護の限界も

預金保険制度による保護には上限(1人当たり元本1000万円とその利息)があるため、高額預金者が全額回収できない可能性が出てきた。

元金融庁検査官の佐藤健太郎氏は「この規模の不正が組織的に行われていた場合、信用組合自体の存続が危ぶまれる。最悪の場合、預金者が全額を回収できない事態も想定しなければならない」と危機感を募らせる。

地元では既に、被害顧客による集団訴訟の準備が進められており、金融機関への信頼を根底から揺るがすスキャンダルとして発展する可能性が高い。

いわき信用組合の広報担当者は「現在調査中であり、現時点でコメントできることはない」と回答するにとどまっている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました