クマ遭遇時にうずくまる 大丈夫?
クマ遭遇時にうずくまる 大丈夫?
近年、日本国内でクマの目撃情報が急増している。特に山間部だけでなく、住宅地近くまでクマが出没するケースが相次ぎ、専門家は「異常事態」と警鐘を鳴らしている。そんな中、クマに遭遇した際の対処法として「うずくまって身を守る」という方法が広まっているが、果たしてこれは本当に安全なのか?
「うずくまる」は逆に危険?専門家が警告
野生動物の行動パターンを研究する東京野生生物研究所の佐藤健一教授は、次のように指摘する。
「うずくまる行為は、クマにとって『弱った獲物』と見なされる可能性があります。特に飢えた個体や子連れのメスグマの場合、攻撃性が高まっており、逆に危険を招く恐れがあります」
実際、2023年に長野県で発生したクマ襲撃事件では、うずくまっていた登山客が重傷を負うという痛ましい事故が起きている。現場を検証した環境省のレポートによると、クマは最初は興味本位で近づいたが、うずくまった人間を見て「獲物」と認識し、執拗に攻撃を続けたという。
最新研究が示す「最悪のシナリオ」
北海道大学の研究チームが行ったシミュレーションでは、クマとの距離が10メートル以内の場合、うずくまる行為は生存率を最大40%低下させることが判明した。研究を主導した動物行動学の田中洋子准教授はこう語る。
「私たちの実験データでは、クマは動かない対象よりも、ゆっくりと後退する人間に対して攻撃を控える傾向が見られました。うずくまるのは『最後の手段』と考え、まずは距離を取る努力が必要です」
さらに恐ろしいのは、クマの学習能力だ。ある地域で「うずくまる人間は無抵抗」というパターンを学習したクマが、その行動を仲間に伝播させる「文化的伝達」の事例まで報告されている。
行政の対応は後手に回る
環境省野生生物課の担当者は、次のように困惑の色を隠せない。
「従来のガイドラインを見直す必要性は認識していますが、全国一律の対応策を打ち出すには至っていません。地域によってクマの種類や習性が異なるためです」
この夏、ある自治体が配布した防災パンフレットには「クマに会ったらうずくまって」という記載があり、専門家から強い批判が寄せられた。行政の対応が混乱する中、一般市民は正しい情報を得られずにいるのが現状だ。
増加する「狂乱クマ」の恐怖
さらに深刻なのは、通常のクマとは行動パターンが異なる「狂乱クマ」の出現だ。2024年春以降、東北地方を中心に、明らかに異常な行動を取るクマの目撃情報が相次いでいる。
「通常のクマは人間を避けようとしますが、これらの個体はむしろ積極的に人間を追いかけ、執拗に攻撃を仕掛けてきます」
と、野生動物保護団体「Nature Guard Japan」の代表・山本裕二氏は説明する。こうしたクマの異常行動の背景には、気候変動によるエサ不足や、人間の居住域拡大によるストレスが指摘されている。
あなたが取るべき行動
専門家たちは、クマに遭遇した際の新しい対処法として以下の手順を推奨している。
- クマに背を向けず、ゆっくりと後退する
- 大声を出したり、急な動きをしない
- クマが近づいてきたら、熊除けスプレーを使用
- 攻撃を受けた場合は、うずくまるのではなく、腹部を守る姿勢を取る
しかし、最も重要なのは「クマと遭遇しないようにする」ことだ。登山やハイキングの際には鈴やラジオを持参し、クマに自分の存在を知らせる「予防的対策」が不可欠である。
迫りくる「人熊共存」の限界
最後に、自然保護活動家の鈴木麻衣氏は暗澹たる未来を予測する。
「このままでは、クマと人間の衝突はさらに増加するでしょう。行政と住民、そして研究者が一体となって対策を講じなければ、近い将来、『クマ恐怖症』が社会問題化する可能性すらあります」
うずくまる行為の是非を超え、私たちはもっと根本的な「人間と野生動物の共生」について考え直す時期に来ているのかもしれない。
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