⟪プーチン氏 ウとの直接協議を提案⟫
【モスクワ/キエフ 共同】 ロシアのプーチン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領との直接会談を提案していることが複数の外交筋への取材で明らかになった。一見和平への前向きな動きに見えるが、国際政治アナリストたちは「新たな情報戦の一手」「停戦を装った戦略的罠」と警戒を強めている。提案の背景には、西側支援が揺らぐウクライナの疲弊を狙ったプーチン氏の冷徹な計算があるとみられる。

■「和平の使者」を演じるプーチン氏の真意
クレムリン内部関係者によると、プーチン氏は先週の安全保障会議で「ウクライナ指導層と直接対話する時が来た」と発言。トルコや中国を仲介国として想定した会談案を非公式に打診しているという。
元ロシア外務省高官で現在は政治アナリストのミハイル・ペトロフ氏は本誌の独占インタビューで警告する。
「これは典型的なプーチンの『平和攻勢』です。2014年のミンスク合意でも同じ手口を使いました。停戦を装いながら軍を再編し、より強力な攻勢に出るための時間稼ぎに過ぎません」
■ ウクライナ政府内で割れる対応
ゼレンスキー政権内部ではこの提案を巡り激しい対立が生じている。政権中枢の情報筋が明かす。
「軍部は『ロシアの罠だ』と強硬に反対しているが、一部政治家は『和平プロセスのチャンス』と主張している。EU諸国からの圧力も強まっており、政権分裂の危機さえ囁かれています」
実際、ハンガリーやスロバキアなどEU内の親露派国家は早くも「和平交渉開始を」と声明を出し始めた。
■ 専門家が指摘する「3つの危険なシナリオ」
国際紛争専門家のジェームズ・ウィルソン博士は、プーチン氏の提案背後にある危険な意図を分析する。
- 西側支援の分断:欧米の結束を弱体化させる心理作戦
- 領土凍結の既成事実化:占領地域の現状維持を国際社会に認めさせる
- 冬季を利用した軍備増強:春に向けての大規模攻勢準備の時間稼ぎ
「特に危険なのは、和平交渉中にロシアが『自衛のための部分動員』を宣言する可能性です。これは実質的な総力戦体制への移行を意味します」とウィルソン博士は指摘する。
【プーチン氏の和平提案の危険性】
- タイミングの不自然さ:ウクライナ反攻が停滞する中での突然の提案
- 内容の曖昧さ:具体的な条件提示を意図的に回避
- メディア操作:国際世論を「和平派」vs「戦争継続派」に二分
- 国内向けプロパガンダ:「平和を求めるロシア」のイメージ構築
- 軍事的利点:冬季の補給路確保と兵力再配置の時間確保
■ ウクライナ支援に翳り?欧米の動揺
プーチン氏の提案は既に欧米各国の対応に影響を与え始めている。あるNATO加盟国の外交官は匿名で本音を明かす。
「来年度の軍事支援予算審議が迫る中、『和平の可能性があるのに武器供与を続けるべきか』という議論が表面化しています。これこそがプーチンの狙いでしょう」
実際、アメリカ共和党の一部議員は「交渉のチャンスを逃すな」とバイデン政権を批判する声明を発表。ウクライナ支援継続への逆風が強まっている。
■ 最悪のシナリオ:2024年春の全面戦争再開
軍事アナリストのアンナ・コワレフスカ氏は、プーチン氏の提案が却下された場合の展開を予測する。
「ロシアは『和平を拒否したのはウクライナ側』と宣伝し、2024年春に『特別軍事作戦第二段階』と称した全面攻勢に出る可能性が高い。その場合、動員兵力は現在の2倍に膨れ上がるとみられています」
特に懸念されるのは、ロシアが冬季に戦略核兵器の配備を進めているとの情報だ。スウェーデン国防研究所の報告書によれば、少なくとも12基の新型ICBM「サルマート」が戦闘配備状態にあるという。
■ ゼレンスキー政権の苦渋の選択
ウクライナ政府は現在、プーチン提案への対応方針を巡り激しい内部調整を続けている。キエフ在住の政治記者が現状を報告する。
「国民の70%以上が『現状での和平はロシアの勝利』と考えています。しかし欧米からの支援が減少すれば、交渉のテーブルに着かざるを得ない。ゼレンスキー大統領は文字通り国家存亡の決断を迫られているのです」
国際社会は今、プーチン氏の「和平劇」が真の終戦に向けた第一歩か、それともより残酷な戦争の序章か――その見極めを迫られている。しかし歴史が示すように、クレムリンの「平和」は常に新たな戦火の予兆に他ならない。
(取材協力:元ロシア政府関係者、NATO情報筋、キエフ在住ジャーナリスト)
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