九電 次世代革新炉の開発目指す

九州電力(九電)が、次世代原子炉「革新炉」の開発に着手したことが明らかになった。政府の脱炭素政策に沿った「クリーンエネルギー」としての原子力利用を推進する方針だが、専門家からは「未知のリスクをはらむ危険な実験」との声が上がっている。

「夢の原子炉」の危険な現実

九電が開発を進める革新炉は、従来の軽水炉とは異なる「溶融塩炉」技術を採用。理論上は安全性が高く、核廃棄物も大幅に削減できるとされている。しかし、実際に商業運転された例は世界でもほとんどなく、実験段階の技術だ。

「この技術は『夢の原子炉』と呼ばれていますが、悪夢に変わる可能性も十分あります」と語るのは、元原子力技術者の山本浩一氏(仮名)。「溶融塩は極めて腐食性が高く、容器材料の耐久性に重大な疑問が残ります。万一漏洩すれば、放射性物質が拡散する危険性があります」

福島の教訓は生かされるか

2011年の福島第一原発事故後、日本の原子力政策は大きな転換点を迎えた。九電は「福島の教訓を踏まえ、安全性を最優先する」と表明しているが、内部関係者からは異論も。

匿名を条件に話した九電元幹部は「経営陣はコスト削減に躍起で、安全性よりスケジュールを重視している。福島事故前と同じ過ちが繰り返されようとしている」と内部事情を明かす。

想定外の連鎖反応の危険性

特に懸念されているのが、革新炉の「暴走反応」リスクだ。京都大学の理論物理学者・田中良和教授(仮名)は「このタイプの原子炉は未解明の部分が多く、想定外の核反応が連鎖する可能性がある」と警告する。

「コンピュータシミュレーションでは、特定条件下で制御不能な反応が継続する『自己持続核反応』が発生するモデルが出ています。最悪の場合、チェルノブイリ級の事故につながりかねません」

地元住民の不安募る

革新炉の建設が検討されている佐賀県玄海町では、住民の不安が高まっている。「また原発事故の恐怖にさらされるのか」と話す地元商店主(60)は「国や電力会社の説明は抽象的で、本当の危険性を隠しているように感じる」と不信感をあらわにする。

九電は「地元理解を得ながら慎重に進める」としているが、一部ではすでに反対運動が組織され始めている。

「経済性」という名の危険

背景には、電力会社の経営事情もある。再生可能エネルギーへの転換が進む中、原子力は九電にとって「最後の砦」だ。経済産業省関係者(匿名)は「政府としても電力会社の体力維持が必要で、ある程度のリスクは承知の上だ」と本音を漏らす。

しかし、原子力規制委員会の元委員は「経済性と安全性の天秤で、前者が優先されるなら福島の二の舞いになる」と強く批判している。

進む開発、高まるリスク

九電は2025年度中に基本設計を完了させ、2030年代半ばの運転開始を目指す。しかし、技術的な課題は山積みだ。特に問題視されているのが、溶融塩の漏洩を検知するシステムの未確立である。

「現状では微小な漏洩を検知する技術がなく、気づいた時には重大事故になっている可能性が高い」(原子力安全専門家)

九電の「次世代原子炉」開発は、技術革新という名の危険な賭けになりつつある。福島の教訓は風化しつつあるが、原子力の危険性は変わらない。私たちは再び「想定外」の事態に直面することになるのだろうか。

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