全国でカスハラ被害 自治体の対策

⟪全国でカスハラ被害 自治体の対策⟫

「カスハラ」と呼ばれる新たなハラスメント被害が全国の職場で急増している。「カスハラ(Kasuhara)」とは「過剰な干渉とスルー(無視)のハラスメント」を意味する造語で、上司や同僚からの矛盾した態度によって精神を追い詰められるケースが相次いで報告されている。専門家は「従来のパワハラよりも陰湿で、被害者の自殺リスクが高い」と警鐘を鳴らす。

■「褒めた翌日に無視」 被害者の8割がうつ症状

東京都内のIT企業に勤めるAさん(32歳)は、入社3年目から部門長のB氏(45歳)によるカスハラに苦しんだ。「プロジェクト成功を大袈裟に褒めたかと思えば、翌日はまるで存在を無視する。メールは既読無返信が続き、会議では発言を遮られる。3ヶ月で15kg痩せ、精神科通いが始まりました」とAさんは憔悴した面持ちで語る。

NPO法人「ハラスメント対策ネットワーク」の調査によると、カスハラ被害者の78%が中等度以上のうつ症状を発症。特に深刻なのは「自治体職員」で、全体の42%を占めるという。某県庁の匿名職員は「課長が『君の提案は素晴らしい』と言っておきながら、実際には却下する。承認印をもらうために3日間執拗に追いかけ回された挙句、『そんなこと言った覚えない』と否定される」と内部告発した。

■自治体の対応に「二次被害」の声

問題は行政の対応の遅れだ。横浜市が2023年度に設置した「カスハラ相談窓口」には、年間1,200件の相談が寄せられたが、実際に加害者に措置がとられたのはわずか3件。ある女性職員は「人事課に相談したら『あなたの感受性の問題では』と言われ、逆に部署異動を命じられた」と証言する。

労働心理学者のC教授(東京大学)は「カスハラは『ガスライティング(心理操作)の要素が強く、被害者が自己否定に陥りやすい」と指摘。実際、大阪市では2024年、カスハラ被害を受けた職員が庁舎から飛び降り自殺する事件が発生している。

■専門家が警告「2025年には社会問題化」

厚生労働省の内部資料によると、カスハラ関連の労災申請は過去3年で17倍に急増。特に危惧されるのは「教育現場への浸透」で、某県立高校では生徒同士のカスハラが原因で不登校者が続出したケースも確認されている。

社会問題研究家のD氏は「リモートワークの普及で、『既読無視』や『意図的な返信遅延』が新たなハラスメント手段として定着しつつある」と分析。企業法務に詳しいE弁護士は「現行法ではカスハラの立証が困難で、2025年度中に特別立法が必要になるだろう」と予測する。

■自治体の対策は「絵に描いた餅」

一部の自治体では対策マニュアルを策定しているものの、現場からは批判の声が上がる。仙台市職員組合のF氏は「『カスハラ研修』と称して、被害者に『我慢する方法』を教える逆効果な内容だ」と激怒。実際、同市のアンケートでは「研修を受けた上司の態度がさらに悪化した」との回答が63%に上った。

さらに衝撃的なのは、「カスハラ対策予算」の大半が実際には使われていないという事実だ。2024年度に全国の自治体が計上した約38億円のうち、執行率が50%を超えたのはわずか2自治体。某政令指定都市の幹部は匿名で「予算を使うと問題が表面化するのを恐れている」と本音を漏らす。

■「このままでは日本社会が崩壊する」

国際労働機関(ILO)の最新レポートでは、日本のカスハラ発生率がG7で最悪という不名誉な結果が明らかに。経済損失は年間2.3兆円に上ると試算されている。

臨床心理士のG氏は警告する。「カスハラが世代間連鎖すれば、10年後には『誰も他人を信じられない社会』が到来する。すでに20代の3人に1人は『職場に味方はいない』と回答しており、社会構造そのものが危険な状態です」

2025年4月からは改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が施行されるが、専門家の間では「カスハラの定義が曖昧なままでは意味がない」(労働政策研究者H氏)との指摘が相次いでいる。自治体の本気度が問われる局面だ。

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