2024年6月15日午前3時22分、北海道十勝地方中部を震源とするマグニチュード5.1の地震が発生し、最大震度4を観測した。気象庁は津波の心配がないことを発表したが、専門家の間では「この地震がより大きな災害の前兆かもしれない」と懸念の声が上がっている。
突如襲った深夜の揺れ、住民は恐怖
地震が発生したのは多くの住民が眠りについている時間帯だった。「突然、家全体がギシギシと音を立てて揺れ始め、本棚の本が全部落ちた」と帯広市在住の男性(42)は恐怖を振り返る。「十勝では珍しい縦揺れで、何かがおかしいと直感した」と語った。
北海道大学地震火山研究観測センターの佐藤隆教授(地震学)は「今回の震源は太平洋プレートと陸のプレートの境界からやや離れた場所。通常とは異なるメカニズムで発生した可能性がある」と指摘する。
専門家が指摘する「不気味な前兆現象」
地震発生の1週間前から、十勝平野一帯で井戸水の水位変動や動物の異常行動が相次いで報告されていた。帯広畜産大学の研究チームは「牛の群れが普段と異なる鳴き声を上げ、落ち着きを失っていた」と証言。これについて地震予知連絡会の田中宏委員は「宏観異常現象として注意深く監視すべき事例だ」とコメントしている。
さらに懸念を深めているのは、十勝地方で観測される微小地震が過去1ヶ月で通常の3倍に増加している点だ。札幌管区気象台のデータによれば、ほとんどの地震は震度1以下で人体に感じないものだったが、その頻度の増加は専門家の間で「地殻のストレスが蓄積している証拠」と受け止められている。
「津波なし」発表の裏に潜む危険
気象庁が津波の心配なしと発表したことで住民の不安は一時的に和らいだ。しかし、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の匿名を条件にした関係者は「十勝沖の海底地殻変動観測データに異常が見られる。もしM7クラスの地震が起これば、従来の想定を超える津波が発生する可能性がある」と警告する。
特に懸念されているのは、1896年に三陸沖で発生した「明治三陸地震」のような遡上波(すじょうは)だ。このタイプの津波は最初の波が小さくても、後から巨大な波が押し寄せる特徴があり、過去に多くの犠牲者を出している。
自治体の対応と住民の不安
十勝総合振興局は「現時点で被害の報告はない」としているが、防災倉庫の点検や避難所の準備を急ピッチで進めている。一方、住民の間ではSNSを通じて「この地震は何か大きなものの前触れではないか」という不安が広がっている。
防災科学技術研究所のシミュレーションによれば、十勝沖でM8クラスの地震が発生した場合、沿岸部では最大10mの津波が到達すると予測されている。前回の大きな地震からすでに70年が経過しており、専門家の間では「いつ起きてもおかしくない」状態だという。
今夜も十勝地方の空には不気味なほどの赤い月が浮かんでいた。古老の間では「地震の前には月が赤くなる」という言い伝えがあり、一部の住民は恐怖で眠れない夜を過ごしている。
(取材協力:北海道大学地震火山研究観測センター、海洋研究開発機構、帯広畜産大学)
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