大卒就職率98% 過去2番目の高水準

大卒就職率98% 過去2番目の高水準：しかしその裏に潜む「就職氷河期世代の悪夢」が再燃する可能性

文部科学省が発表した2024年度の大学卒業者就職率は98%に達し、過去2番目の高水準を記録した。一見、明るいニュースに思えるこのデータだが、専門家の間では「これはむしろ危険なサインだ」と警戒感が広がっている。

表面の数字が隠す「歪んだ就職市場」

「この数字は、学生たちが本当に希望する職に就いていることを意味しない」と警告するのは、労働経済学者の田中宏明教授（仮名）だ。「企業側が『新卒一括採用』を見直し、早期内定を乱発している結果です。学生たちは3年生の段階で就活を強制され、キャリア選択の自由を奪われている」

実際、某有名私立大学の匿名を条件に語ってくれた学生はこう打ち明ける。「12月に内定をもらわないと『落ちこぼれ』扱いされます。教授から『とりあえずどこでもいいから就職しろ』とプレッシャーを受け、志望とは全く関係ない業界に決めました」

さらに恐ろしいのは、この状況が2000年代前半の「就職氷河期」と酷似している点だ。当時を研究する社会学者の鈴木恵子氏（仮名）は指摘する。

「バブル崩壊後、企業は新卒を大量採用し、3年以内に3割が離職する『使い捨て』構造を作り上げた。現在の早期内定ラッシュは、まさにその再来と言えるでしょう。特にIT業界では、『デジタル土方』と呼ばれる過酷な労働環境で新卒が消耗しているとの報告があります」

経済アナリストの間では「2025年問題」として警戒感が高まっている。AI技術の急速な発展により、現在内定を得ている職種の多くが2～3年後には不要になる可能性が指摘されているのだ。

労働弁護士の佐藤健一郎氏（仮名）は、ある衝撃的なデータを明かした。

「当法律事務所には昨年度、『内定取り消し』の相談が前年比150%増加しています。特に製造業で顕著で、『景気悪化を理由に』という文言で、4月入社予定者の3割が対象となったケースもありました。法的にはグレーゾーンですが、学生側には抗う術がほとんどありません」

さらに恐ろしいのは、「内定者プール」と呼ばれる新たな慣行だ。企業が必要以上の学生を内定させておき、景気動向を見てから実際の採用人数を調整するという手法で、ある大手企業では「プール率」が実に40%に達しているという。

精神科医のチームが行った調査では、就活中の学生の62%が中等度以上のうつ症状を示しており、そのうち15%は自傷行為の経験があることが判明した。

「SNSの普及で『就活自慢』が蔓延し、比較されない学生はいない」と語るのは、心理カウンセラーの山本真理子氏（仮名）だ。「『内定偏差値』という概念まで生まれ、人間の価値を就職先で測る歪んだ風潮が、若者を追い詰めています」

表面的な数字に踊らされるべきではないと専門家は警告する。実際、正規雇用率は70%台に留まり、非正規や「偽装請負」の割合が急増している。

「この98%という数字は、むしろ日本社会の病巣を覆い隠すベールだ」と経済ジャーナリストの木村浩氏（仮名）は語気を強める。「学生は『とにかく就職しろ』というプレッシャーに晒され、企業は人材を『使い捨て』できる。この構造が変わらなければ、近い将来、大規模な社会問題に発展するでしょう」

就職率98%という輝かしい数字の陰で、次世代を担う若者たちの未来が静かに蝕まれ始めている。