近年、婚活アプリを利用して出会いを求める人が急増しているが、その裏で「既婚者が独身を装う」という深刻な問題が表面化している。全国各地で虚偽プロフィールをめぐる裁判が相次ぎ、中にはストーカー行為や詐欺事件に発展するケースも報告されている。専門家は「婚活アプリの闇」に警鐘を鳴らす。
「理想の相手」の正体は…
東京都内に住む女性Aさん(32歳)は、人気婚活アプリ「マリッジ・スタート」で出会った男性と交際を開始した。プロフィールには「独身・年収800万円」と記載されていたが、実際には既婚者で、子供までいたことが判明。Aさんが男性を告訴したところ、男性は「妻とは別居中で、法的には独身だと思った」と主張。裁判は現在も続いている。
「このようなケースは氷山の一角に過ぎません」と語るのは、サイバー犯罪に詳しい弁護士の佐藤健一氏だ。「婚活アプリでは、プロフィールの虚偽記載が簡単に行える上、運営会社の審査も不十分な場合が多い。特に既婚者の不正利用は、ストーカーや金銭詐欺に発展する危険性が高い」
「婚活アプリ詐欺」の手口
実際にどのような被害が起きているのか。婚活アプリを巡る主なトラブルをまとめた。
- 「結婚前提」を装った金銭要求:交際を装い、多額の借金をさせられる
- ストーカー行為:自宅や職場を特定され、脅迫を受ける
- 個人情報の悪用:アプリ上で得た情報を利用した詐欺
- 既婚者の不正利用:不倫目的での利用が後を絶たない
特に深刻なのは、アプリ上で知り合った相手から「結婚の準備金」などと称して金銭を要求され、数百万円をだまし取られるケースだ。被害者の中には、借金を背負い自殺未遂を図った人もいるという。
運営会社の対応は?
主要な婚活アプリ運営会社にコメントを求めたところ、「利用規約で虚偽記載を禁止している」(会社X)、「不審なアカウントは随時削除している」(会社Y)などの回答があった。しかし、実際には審査が不十分で、簡単に虚偽のプロフィールが作成できるのが実態だ。
「婚活アプリは『出会いの場』として便利な反面、犯罪の温床にもなり得ます」と警告するのは、ネット犯罪対策の専門家・田中麻衣子氏。「特に女性は、相手の身元を徹底的に確認する必要があります。安易に個人情報を教えたり、高額な金銭のやり取りをしたりするのは極めて危険です」
「AIが生成した偽プロフィール」の脅威
さらに最近では、AIを利用して「完璧なプロフィール」を作成する手口も登場している。実際には存在しない人物の写真や経歴をAIで生成し、婚活アプリに登録するケースだ。これにより、従来の審査方法では不正利用を見抜くことが難しくなっている。
「AI生成のプロフィールは、人間の目ではほぼ見分けがつきません」と田中氏は指摘する。「近い将来、『婚活アプリで知り合った相手が実はAIだった』という事件が起こるかもしれません」
利用者が取るべき対策
専門家は、婚活アプリを利用する際に以下の点を徹底するよう呼びかけている。
- プロフィールの内容を鵜呑みにしない
- すぐに個人情報を教えない
- 高額な金銭の要求には絶対に応じない
- 必ず複数回の対面デートを経てから関係を深める
- 不審な点があればすぐにアプリ運営に通報する
婚活アプリは現代の出会いの形として定着しつつあるが、その便利さの裏に潜む危険性を決して軽視してはならない。あなたの「理想の相手」が、実は悪意ある人物かもしれない──。
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