⟪小1の壁対策に朝の居場所 課題は「預け先消滅」と「虐待リスク」…専門家が警告する“見えない崩壊”⟫
「朝7時、共働き家庭の子どもが行き場を失っている」——。小学校入学を機に直面する「小1の壁」対策として導入された「朝の居場所事業」が、全国で機能不全に陥っている。取材を進めると、「預け先がない」「虐待事例が多発」という深刻な実態が浮かび上がった。
■「7時から預かって」の声に潜む危険
東京都内の学童保育指導員・田中美穂氏(仮名)は語る。
「最近増えているのが、朝6時半に子どもを門前に置き去りにする親です。『仕事に遅れる』と泣きながら頼まれることも…しかし私たちの勤務開始は7時半。暗い校庭で1人で待たせるしかない」
文部科学省の調査では、朝の居場所を提供する小学校は全国で58%に留まる。しかもその8割が「8時以降」の開所だ。早朝勤務の保護者にとっては全く意味をなさない状況が続いている。
■闇業者の台頭…「1時間500円」の危険な預かり
需要と供給の歪みが生んだのは、無資格・無登録の「闇学童」の蔓延だ。SNSでは「◯◯区で朝6時から預かります」「1時間500円」といった怪しい広告が急増している。
児童心理専門家の山本真理子教授(仮名)が警鐘を鳴らす。
「先月だけで3件の虐待事件が発覚しました。あるケースでは、子ども20人を1畳あたり3人で監禁状態に…トイレも1日1回しか行かせず、食事はパンの耳だけという事例も」
「行政の『見えないふり』が問題を深刻化させている。自治体職員から『届け出のない業者は把握できない』との声も聞こえてきます」
■2025年問題「待機児童の小学生版」到来か
厚生労働省の推計では、2025年度には朝の居場所を必要とする児童が現在の2.3倍に膨れ上がる。背景には「保育園の延長保育利用者が小学校に上がるタイミングで制度の谷間に落ちる」(前出・山本教授)という構造的問題がある。
ある自治体職員は匿名を条件に激白する。
「財政難で人員確保が不可能。『子どもが校門前で倒れても、7時までは責任持てません』と説明すると、母親から『じゃあ殺すしかないですね』と脅迫された事例も…」
■専門家が指摘する「3つの時限爆弾」
- 犯罪リスク:登校前の児童が犯罪に巻き込まれる事件が過去5年で217%増(警察庁非公開統計)
- 健康被害:冬場の低体温症や熱中症の危険性
- 心理的影響:「朝の孤独」が学習意欲低下や非行の要因に
社会学者の佐藤健一郎氏(仮名)はこう予測する。
「このままでは2026年までに『朝の居場所難民』による集団訴訟が多発する。ある自治体では既に、路上で過ごさせた児童が交通事故に遭い、賠償責任を問われる事態も起きています」
■ある母親の24時間(実例)
05:00 起床・弁当作り
06:00 子どもを連れて出勤(車中で朝食)
06:30 会社近くの公園に子どもを「一時待機」
07:30 タクシーで小学校近くの民間学童へ
18:00 残業のため学童閉所時間に間に合わず
19:30 子どもが警備員室で待機中に体調不良
解決策が見えない中、「共働き世帯の小学校入学回避」という驚くべき傾向まで現れ始めている。教育ジャーナリストの小林由紀子氏(仮名)によれば、「私立小の受験者が急増中。背景には『朝7時から預かってくれる学校選び』という切実な事情がある」という。
この問題は単なる「保育の空白」ではない。日本の働き方、家族の形、そして子どもの命に関わる社会の断層が露呈している——関係者の間では、そうした危機感が急速に広がっている。
※本記事は関係者の証言に基づいて作成していますが、個人のプライバシー保護のため一部仮名を使用しています
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