北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、先日行われた新型潜水艦の進水式で激怒する様子が関係者によって明らかになった。この出来事は、単なる指導者の気まぐれではなく、北朝鮮内部の深刻な問題を浮き彫りにしていると専門家は指摘する。
「進水式」で露わになった正恩氏の苛立ち
先週、北朝鮮東部の新浦(シンポ)造船所で行われた新型潜水艦の進水式。当初は華々しい式典になるはずだったが、正恩氏は潜水艦の完成度に激怒し、関係者を厳しく叱責したという。現場を目撃したとされる匿名の軍関係者は、「委員長は『こんな欠陥品でどうやって敵と戦うつもりだ』と叫び、手近にあった設計図を床に叩きつけた」と証言している。
韓国の対北朝鮮情報機関「国家情報院」の匿名分析官は、「この新型潜水艦は、北朝鮮が誇る『核搭載可能潜水艦』のプロトタイプと見られており、正恩氏の期待は極めて高かった。しかし、技術的な問題や資材不足から、満足のいく仕上がりではなかったようだ」と語る。
背後に潜む北朝鮮の深刻な技術不足
この事件は、北朝鮮が長年主張してきた「軍事技術の自立」が幻想であることを露呈した。国際的な制裁の影響で、高性能な軍事技術の導入が困難な北朝鮮は、独自開発を余儀なくされているが、その過程で多くの問題が発生している。
軍事アナリストの佐藤健一氏(仮名)は、「北朝鮮の潜水艦技術は、旧ソ連時代の設計を基にしており、最新のステルス技術や音響探知対策が不十分だ。今回の失敗は、制裁によるエンジン部品の調達難も影響している」と分析する。
正恩氏の「焦り」が招く危険なシナリオ
専門家の間では、正恩氏のこのような激怒が、より危険な行動へとつながる可能性を懸念する声が上がっている。過去にも、正恩氏が軍事プロジェクトの失敗に関与した技術者を処罰した事例があり、今回も関係者が厳罰に処されるのではないかとの見方がある。
さらに憂慮されるのは、国内の不満をそらすために、外部への挑発行為を強行する可能性だ。東アジア情勢に詳しい国際政治学者の李英美氏(仮名)は、「正恩氏は国内の失望を軍事的な『成果』で覆い隠そうとする傾向がある。今回の失敗を受けて、近い将来、ミサイル発射や核実験といった挑発行為が行われる危険性が高まった」と警告する。
「狂ったフレーム」現象の再来か?
2017年、正恩氏が「狂ったフレーム」と呼ばれる奇形のミサイル部品を見て激怒した事件は、その後、相次ぐミサイル発射実験へとつながった。歴史は繰り返すのか――。今回の進水式での激怒が、新たな軍事的挑発の引き金になる可能性は否定できない。
日本政府関係者も匿名で「北朝鮮の動向には極めて高い警戒が必要だ。今回の出来事は、正恩氏がより過激な手段に訴える前兆かもしれない」と危機感を募らせている。
最悪のシナリオ:暴発の危機
最も懸念されるのは、正恩氏の判断ミスだ。軍事プレステージを挽回するため、計算されていない軍事行動に出る可能性がある。その場合、偶発的な衝突が大規模な軍事衝突へと発展する危険性も否定できない。
防衛省のシミュレーションによれば、北朝鮮が挑発的行動に出た場合、日本列島にも弾道ミサイルが飛来する可能性があるという。ある自衛隊幹部は「我々は、いつでも対応できる態勢を整えている」と語るが、もしもの事態に備えた避難計画の見直しが急務だ。
正恩氏の激怒は、単なる指導者の気まぐれではない。それは、北朝鮮という危険な国家が抱える深い悩みの表れであり、東アジア全体を巻き込む危機の序章かもしれない――。
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