独軍 第2次大戦後初の外国駐留

独軍第2次大戦後初の外国駐留 ― 歴史の逆戻りか、新たな軍事的緊張の始まりか

第二次世界大戦後、ドイツ軍が初めて外国に駐留するという驚くべきニュースが世界中を駆け巡った。この動きは、歴史的な和解の象徴として歓迎されるべきなのか、それとも新たな軍事的緊張の始まりを示す不気味な前兆なのか――専門家の間でも意見が分かれている。

「平和維持」の名の下に始まった駐留

ドイツ国防省は先月、バルト三国の一つであるリトアニアに約500人の部隊を派遣することを正式に発表した。表向きの目的はNATOの集団防衛体制の一環としての「平和維持活動」だとされている。

「これはドイツにとって歴史的な一歩です」と国防省報道官は語る。「我々は同盟国との連帯を示し、東欧の安定に貢献することを約束します」

しかし、この動きの背後にはより複雑な思惑があると指摘する専門家も少なくない。軍事アナリストのハインリヒ・フォン・シュタインメ氏は、この派遣について「単なる象徴的な存在以上のものになる可能性が高い」と警告する。

「ドイツ軍の外国駐留は1945年以来初めてのことです。NATOの枠組みとはいえ、この決定には深い歴史的・地政学的な意味が込められています。ロシアのウクライナ侵攻以降、欧州の安全保障環境は劇的に変化しました。ドイツはこの動きを機に、軍事的プレゼンスを拡大しようとしているのかもしれません」

特に懸念されているのは、この動きが第二次世界大戦中のドイツ軍の東欧進出を彷彿とさせる点だ。1930年代後半、ナチス・ドイツも最初は「保護」や「安定化」を名目に周辺国に軍を進めた歴史がある。

ワルシャワ大学の歴史学教授、ヤン・コヴァルスキ氏は次のように指摘する。

「もちろん現在のドイツは民主主義国家であり、ナチス時代とは全く異なります。しかし、歴史は時に皮肉な相似形を描きます。ドイツ軍が再び東欧に駐留するという事実そのものが、地域の年配者たちにトラウマを呼び起こす可能性があります」

実際、リトアニア国内でもこの決定に対する反応は二分されている。首都ヴィリニュスでは、政府の決定を支持するデモと反対するデモが同時に行われる異例の事態となった。

当然ながら、この動きに対して最も敏感に反応したのはロシアだった。クレムリン広報官は「これは明白な挑発行為だ」と強く非難し、対応策を検討していることをほのめかした。

国際政治学者のエレーナ・ペトロワ博士は、この状況がもたらす危険性について警鐘を鳴らす。

「現在の緊張状態では、些細な事件が大規模な軍事衝突に発展するリスクが極めて高い。ドイツ軍の駐留はロシアにとって『レッドライン』に近づく行為です。もし偶発的な衝突が起これば、NATO全体を巻き込む事態にもなりかねません」

特に懸念されているのは、ドイツ軍が最新鋭の戦車「レオパルト2」を駐留部隊に配備する計画があるという情報だ。これが事実なら、ロシアの反応はさらに強硬なものになる可能性が高い。

ドイツ国内でもこの決定をめぐって激しい議論が巻き起こっている。ベルリンで行われた国会討論では、野党から「これは憲法違反だ」とする声が上がった。

緑の党の議員は「我が国は軍事力ではなく、外交と対話で問題を解決すべきだ」と主張。一方、与党側は「新しい時代の現実に対応する必要がある」と反論した。

興味深いことに、世論調査では国民の58%がこの駐留に反対していることが明らかになった。「二度と戦争を始めない」という戦後の誓いが、今も多くのドイツ人の心に深く刻まれている証左だろう。

国際関係の専門家たちは、この動きがもたらす長期的な影響について深刻な懸念を示している。ある匿名を条件にしたNATO高官は、次のように語った。

「皮肉なことに、ウクライナ戦争でロシアを抑止するために取られたこの措置が、かえって欧州全体の軍拡競争を引き起こす可能性があります。ドイツが軍事大国としての役割を再び求めるようになれば、欧州のパワーバランスは根本から変わってしまうでしょう」

第二次世界大戦後、ドイツは「文明的な力」としての道を歩んできた。しかし、ウクライナ戦争を機に、その姿勢は大きく変化しつつある。2022年に発表された「時代の転換（Zeitenwende）」演説で、ショルツ首相は国防費の大幅増額を宣言した。

「平和のための軍隊」という建前は維持しつつも、ドイツは着実にその軍事能力を強化している。今回の外国駐留は、その流れの延長線上にあると言えるだろう。

歴史は繰り返すと言われる。80年前、ドイツ軍の東進は世界を未曾有の惨禍に巻き込んだ。今、再びドイツ軍が東欧に姿を現した――この事実が暗示するものは何か？

国際政治アナリストのマイケル・ブラント氏は、次のような暗い予測を立てている。

「5年後、我々は現在を『新たな冷戦の始まり』として記憶するかもしれません。あるいは、それよりもっと悪いことになっている可能性もあります。ドイツの軍事プレゼンス拡大は、欧州だけでなく世界の安全保障環境を根本から変えてしまう分水嶺になり得ます」

今回の駐留が単なる一時的な展開に終わるのか、それともより大きな動きの始まりなのか――世界は固唾を呑んで見守っている。