⟪経営再建中のJDI 千人超削減検討⟫
日本ディスプレイ(JDI)が従業員の大規模リストラに踏み切る可能性が浮上。関係者への取材により、同社が1000人を超える人員削減を検討していることが判明した。経営再建中の同社にとっては「生き残りをかけた最後の手段」とされ、業界関係者の間では「日本発のディスプレイ技術が消える日が近づいている」との危機感が広がっている。
■「リストラ規模は最大1500人」内部資料が示す衝撃的事実
JDI内部で流通しているとされる極秘資料によると、同社は2024年度中に「1000~1500人規模」の人員削減を計画しているという。これは現在の従業員数の約15~20%に相当し、主に国内工場の生産ライン縮小に伴う人員整理が中心とみられる。
「すでに主要取引先からの発注減が確定しており、今の人員規模を維持することは不可能」(JDI幹部)との声も漏れており、早期退職制度の拡充や希望退職の募集が近く開始される見通しだ。
■「技術流出の危機」専門家が指摘する悪夢のシナリオ
東京工業大学の山本敏雄教授(経営工学)は今回の動きについて「単なるコスト削減では根本的な解決にならない」と指摘する。
「JDIが抱える根本的問題は、中国・韓国メーカーとの価格競争に敗れたことにある。リストラで即時的な経費は削減できるが、熟練技術者が大量に流出すれば、かえって競争力を失う悪循環に陥る危険性がある」
実際、ある半導体業界の関係者は「すでに中国企業からJDI技術者への引き抜き工作が活発化している」と証言。特に有機EL分野の技術者が標的となっており、「日本のディスプレイ産業の知財が海外に流出する危機的状況」(同関係者)が進行中だという。
■「工場閉鎖のドミノ」地域経済への打撃は避けられない
JDIの主要生産拠点がある石川県や千葉県では、地元経済への影響を懸念する声が早くも噴出している。ある地元自治体関係者は「JDI関連の下請け企業が地域に100社以上存在する。親会社の大幅な人員削減は、地域雇用の崩壊を意味する」と顔を曇らせる。
特に懸念されるのは東浦工場(石川県)の行方だ。複数の関係者によれば、「2025年3月をめどに生産能力を半減させる方針」が内部で検討されており、最悪の場合、完全閉鎖も視野に入れられているという。
■「政府支援も限界」資金繰り悪化が招く倒産リスク
JDIはこれまで政府系ファンドからの資金注入を繰り返し受けてきた。しかし、産業革新機構(現INCJ)出身の金融アナリスト・田中浩一氏は「もはや追加支援の余地はない」と断言する。
「累積赤字が5000億円を超える現状で、さらに公的資金を投入する正当性は失われた。今回のリストラが失敗に終われば、法的整理(倒産)へのカウントダウンが始まる」
実際、主要取引先であるApple社が有機ELパネルの調達先を中国BOEに切り替えたことが決定的打撃となっており、JDIの株価は年初来70%以上下落。市場関係者の間では「年内に東証プライム市場からの降格も現実味を帯びてきた」(証券アナリスト)との見方が強まっている。
■「日本のモノづくり凋落」を象徴する危機
元経済産業省官僚で現在は早稲田大学客員教授の鈴木健二氏は、JDI問題を「日本の製造業が直面する構造的問題の縮図」と指摘する。
「JDIは日本の優れた部品技術を集結させた『国策企業』だった。それが中国勢の急追を許し、技術優位を維持できなかったことは、日本の産業競争力全体に対する重大な警告だ」
特に憂慮されるのは、JDIの苦境がサプライチェーン全体に波及する可能性だ。ディスプレイ用ガラス基板を手掛けるあるメーカー幹部は「もしJDIが倒れれば、我が社の売り上げの3割が消える」と明かし、関連業界への影響の大きさを物語っている。
【取材後記】
JDI本社を訪れた記者は、社員たちの沈痛な表情が印象的だった。ある中堅社員は「もう逃げ場がない。技術者としてのキャリアが終わるかもしれない」と漏らした。日本のディスプレイ産業の命運が、今まさに風前の灯となっている。
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