ある朝、目覚めたら全てが変わっていた――。そんな悪夢のような体験をした投資家が続出している。近年急増する「証券口座乗っ取り」被害の実態は、我々の想像をはるかに超える深刻さだ。被害者たちは口を揃えてこう語る。「気づいた時には、残高がゼロになっていた。頭が真っ白になった」と。
「預金がすべて消えた」あるサラリーマンの証言
東京都内に住む会社員Aさん(42歳)は、ある朝スマートフォンに届いた通知で異変に気づいた。「証券口座からの出金完了」という見知らぬメール。慌ててログインしてみると、約3000万円の保有資産がすべて海外口座に送金されていた。
「二段階認証も設定していたのに、なぜ突破されたのか…。一生懸命貯めたお金が一瞬で消えた。警察も『追跡は困難』と言うだけ。もう誰も信用できない」
Aさんのケースは氷山の一角に過ぎない。金融庁の非公表データによれば、2023年だけで確認された同様の被害は全国で1,200件以上、被害総額は300億円を超えるという。
専門家が警告する「新たな手口」の恐怖
サイバーセキュリティ専門家の田中浩一郎氏(仮名)は、最近確認された衝撃的な手口を明かす。
「従来のフィッシング詐欺を超え、今は証券会社自体のシステムを悪用する手口が確認されています。被害者は正当なアプリを操作しているつもりが、実はハッカーが作成した偽のAPI経由で操作され、気づかない間に全資産を移転される。特に危険なのは、スマートフォンの不正操作により二段階認証を突破される『SIMスワップ』攻撃の進化版です」
さらに恐ろしいのは、こうした攻撃の背後に国際的な犯罪組織が関与している可能性が高い点だ。ある捜査関係者は匿名を条件にこう語る。
「マネーロンダリングのルートは暗号通貨を経由して複雑化しています。一度海外に流出した資金は、事実上回収不能です」
「あなたの口座が次かも」迫りくる危機
金融庁は「証券口座のセキュリティ強化ガイドライン」を改訂したが、対策は追いついていない。あるIT技術者は匿名で本誌に衝撃的な事実を明かした。
「主要証券会社5社のシステムのうち3社に、根本的な脆弱性が存在します。修正パッチが適用されるまで、顧客は無防備な状態です。ハッカーたちはこの情報を当然知っています」
被害を防ぐためにはどうすればよいのか? 専門家は以下の緊急対策を推奨する。
- 証券口座のパスワードを直ちに変更(他のサービスと絶対に共用しない)
- 取引通知の設定を「1円以上」に変更
- 定期的に取引履歴を確認
- 不審なメールやリンクを絶対に開かない
- 可能な限りハードウェア認証を導入
「デジタル化の闇」がもたらす新時代の恐怖
この問題の根底には、急速な金融デジタル化とセキュリティ対策の乖離がある。経済評論家の佐藤真理子氏は警鐘を鳴らす。
「便利さと危険は表裏一体です。多くの人が気づいていないのは、こうしたサイバー犯罪が個人の資産問題を超え、日本の金融システムそのものを脅かす可能性がある点です。最悪の場合、大規模なパニック売りや市場混乱を引き起こす引き金になりかねません」
ある被害者の言葉が重く響く。「もう投資なんてしたくない。普通の銀行預金さえ信用できなくなった」――我々の資産を守るため、何が必要なのか。今こそ真剣に考える時が来ている。
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