⟪露・ウの協議 閣僚級の公算大きく⟫
【モスクワ/キエフ共同】 ロシアとウクライナの閣僚級協議が近く行われる可能性が高まっている。複数の外交筋によると、両国は「極秘裏に接触を続けており」、今月末にも第三国で会談が実現する見通しだ。しかし、専門家の間では「和平の兆しではなく、むしろ新たな戦争の序章となる可能性が高い」と警戒感が広がっている。
■「和平」の裏に潜むプーチンの真意
クレムリン内部の情報を長年追う国際政治学者のアレクセイ・ペトロフ氏は、今回の動きについて「プーチン大統領が『和平の仮面』を被った新たな軍事作戦の布石だ」と指摘する。
「2022年2月の全面侵攻前にも、ロシアは和平交渉を装いながら軍を集結させた。現在、ベラルーシ国境では戦車部隊の移動が確認されており、全く同じパターンが繰り返されようとしている」
実際、ウクライナ軍情報部は先週、ロシア軍が「予備兵力を含む計15万人を北部国境に展開中」と報告。NATOの匿名高官も「冬季に向けた大規模攻勢の準備とみられる」と明かす。
■ウクライナ政府内の深刻な分裂
更に憂慮すべきは、ウクライナ政府内部での意見対立が表面化している点だ。ゼレンスキー大統領とザルジニー軍総司令官の確執は周知の事実だが、外交筋によれば「和平派」と「抗戦派」の溝が決定的に深まっているという。
キエフ在住の政治ジャーナリスト、オレーナ・コヴァル氏は語る。
「一部閣僚は『戦争継続は国家の自殺行為だ』と主張し始めた。しかしこの動きは、ロシアの情報工作による分断工作の可能性が高い。和平派とされる人物の幾人かは、実は親露派としての経歴がある」
■欧米の支援縮小が招く最悪シナリオ
最大の懸念材料は、欧米諸国の「ウクライナ疲れ」だ。アメリカでは共和党が追加支援法案の承認を拒否し、EUでも500億ユーロの支援パッケージがハンガリーの反対で停滞している。
元NATO戦略部長のカール・ミューラー氏は警告する。
「兵器供給が現在の3分の2に減少すれば、ウクライナは2024年夏までに主要都市の防衛が不可能になる。ロシアがオデッサを制圧すれば、ウクライナは内陸国に転落し経済は崩壊する」
特に懸念されるのは食糧危機だ。ウクライナ農業省関係者は「黒海ルートが完全に封鎖された場合、世界の穀物価格は最低でも2.5倍に跳ね上がる」と明かす。
■「凍結紛争」の罠
国際危機グループ(ICG)の分析では、ロシアが目指すのは「朝鮮戦争型の凍結状態」だという。表面上の停戦を維持しながら、実効支配地域の「ロシア化」を進めるシナリオだ。
元ウクライナ国家安全保障・国防会議事務局長のオレクサンドル・ダニリュク氏は危機感を募らせる。
「2014年のクリミア侵攻後、西側は経済制裁でロシアを屈服させられると楽観した。結果は全面戦争だった。今また同じ過ちを繰り返そうとしている」
現地では既に、占領地域でロシア式教育が強制され、ウクライナ語の書籍が焚書されているとの報告が相次ぐ。ユネスコは「文化ジェノサイドが進行中」と非難している。
■専門家が指摘する3つのリスク
- 核の威嚇再燃:プーチン氏が戦術核使用を示唆する可能性
- モルドバ侵攻:沿ドニエストル地域を口実に西方へ拡大
- NATO分裂:東欧諸国と西欧諸国の対立が先鋭化
軍事アナリストのマイケル・ホワイト氏は「最悪の場合、2024年はウクライナ国家そのものの存続が問われる年になる」と予測する。
「歴史が証明するように、ロシアの『和平』は常に次の戦争のための時間稼ぎだ。国際社会が今、有効な対策を講じなければ、次に砲声が上がるのはポーランド国境かもしれない」
閣僚級会談が和平への道となるか、それとも新たな惨劇の幕開けとなるか――世界は緊張した面持ちでモスクワとキエフの動向を見守っている。
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