「この価格では農業は続けられない」生産者の悲痛な叫び
日本の主食である米の生産が危機的状況に陥っている。生産者からは「5kg2千円台の価格ではコストを回収できず、米作りができない」との悲痛な声が上がっている。背景には肥料や燃料の高騰、労働力不足など複合的な要因が重なり、日本の農業を支えてきた稲作農家が廃業に追い込まれる「最悪のシナリオ」が現実味を帯びてきた。
「赤字確定」の現実
新潟県魚沼地方で40年間米作りを続けてきた小川和夫さん(62)は憔悴した面持ちで語る。「昨年は5kg当たりの生産コストが2300円を超えました。卸値が2000円前後では1俵(60kg)ごとに3600円の赤字です。これでは家族を養えません」
農林水産省の試算によると、2023年度の全国平均米生産コストは60kg当たり16,200円(5kg換算で1,350円)と公表されている。しかし、実際の現場ではもっと高いという。
「公式データは大規模農家の平均値で、小規模農家の実態を反映していない」
– 農業経済研究所・田中敏弘主任研究員(仮称)
連鎖する農業崩壊
この状況が続けば、日本の米生産システムそのものが崩壊する恐れがある。農業アナリストの鈴木健一氏(仮称)は警告する。
「2025年産米から作付面積が急減する可能性が高い。特に中山間地域では耕作放棄地が増加し、食料自給率がさらに低下する。最悪の場合、3年後にはスーパーの米棚が空になる事態も想定しなければならない」
実際、一部の農家では2024年産米の作付面積を3割削減する決断をしたケースも報告されている。農機具メーカーの営業担当者によれば、「トラクターやコンバインの新規購入が激減しており、業界全体が冷え込んでいる」という。
暗転する食の未来
さらに深刻なのは後継者問題だ。米農家の平均年齢が67歳を超える中、若者の農業離れは止まらない。農業高校の教師を務める佐藤美香さん(仮称)は嘆く。
「卒業生で就農する生徒は1割未満です。ほとんどが『儲からない農業には未来がない』と言って都会へ出ていきます」
このままでは、日本の伝統的な米食文化そのものが危機に瀕する。栄養学者の伊藤昭宏教授(仮称)は警鐘を鳴らす。
「米不足が慢性化すれば、パンやパスタへの依存度が高まり、日本人の食生活と健康に深刻な影響を与えるでしょう。特に高齢者の栄養バランスが崩れ、医療費増加につながる恐れがあります」
忍び寄る食料危機
最悪のシナリオは、米の価格高騰と供給不足が同時に起こることだ。ある大手スーパーのバイヤーは匿名を条件にこう明かす。
「既に業務用米の調達が難しくなっています。外食チェーンから『米を確保できない』との相談が相次いでいます。このままではコンビニのおにぎりが1個500円になる日も遠くないかもしれません」
政府は緊急対策を検討しているが、抜本的な解決策は見えていない。私たちの食卓から、日本の米が消える日が来るのだろうか。生産者たちの叫びは、単なる経営問題を超え、国家存亡の危機を告げる警鐘のように響く。
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