ニラとスイセン間違え調理 食中毒で死者も…専門家が警告「家庭菜園の危険な盲点」
春先の食卓を彩るニラとスイセン。見た目が酷似しているこの2つの植物を誤って調理し、重篤な食中毒症状を引き起こす事例が相次いでいる。先週末には埼玉県内の家庭で、スイセンをニラと誤認して餃子に混入させたことが原因で、70代の女性が死亡する痛ましい事故が発生した。
「区別がつかない」と専門家が指摘
国立毒性植物研究所の田中博教授は「特に春先のスイセンの新芽はニラと見分けがつきにくく、毎年同様の事故が発生している」と警鐘を鳴らす。「スイセンにはリコリンなどの有毒アルカロイドが含まれており、摂取すると嘔吐、下痢、最悪の場合心停止に至ることもある」と説明する。
「家庭菜園でニラを栽培している場合、近くにスイセンが植えられているケースが多く、収穫時に混入する危険性が高い。特に高齢者の視力低下が事故を招く要因となっている」
過去5年で23件の中毒報告
厚生労働省のまとめによると、過去5年間でニラとスイセンの誤食による中毒事例は全国で23件確認されており、そのうち3件が死亡事例となっている。特に危険なのは「スイセンの球根をニンニクと間違える」ケースで、有毒成分の濃度が高いため少量でも危険だという。
ある家族の悲劇
先月、千葉県市川市では、庭で収穫した「ニラ」を使って作った味噌汁を家族4人で食した後、全員が救急搬送される事件が発生した。主婦のAさん(42)は「毎年同じ場所からニラが生えてくると思っていた」と涙ながらに語る。実際には前の住客が植えたスイセンが繁殖していたのだ。
専門家が提案する3つの対策
- ニラとスイセンを近接して栽培しない
- 収穫前に葉を揉んでニラ特有の香りを確認
- 疑わしい場合は絶対に口にしない
日本中毒情報センターは「万が一誤食した場合、自己判断で吐かせず、すぐに医療機関を受診してほしい」と緊急呼びかけを行っている。春の食卓を襲うこの「緑の殺人者」に、今一度注意を向ける必要がありそうだ。
コメント