ニラとスイセン間違え調理 食中毒で死者も…専門家が警告「家庭菜園の危険な盲点」
春の訪れとともに、家庭菜園で収穫した野菜を調理する人が増える中、ある恐ろしい事故が相次いで報告されている。それは、食用の「ニラ」と有毒植物の「スイセン」を誤って摂取し、重篤な食中毒症状を引き起こすケースだ。今月だけで全国で12件の中毒事例が確認され、中には死亡に至ったケースも報告されている。
見分けがつかないほど酷似した外見
「ニラとスイセンの葉は専門家でも見間違えることがあるほど似ています」と語るのは、国立毒性植物研究所の田中博教授だ。実際に両者を並べると、緑色の細長い葉という点ではほぼ区別がつかず、特に若いスイセンの葉はニラとそっくりなのだという。
問題は、スイセンの葉や球根には「リコリン」という猛毒が含まれている点だ。これを摂取すると、30分以内に激しい嘔吐や下痢、腹痛が起こり、最悪の場合、多臓器不全で死に至ることもある。
ある家族の悲劇
先月、埼玉県で実際に起きた事例では、家庭菜園を始めたばかりの50代主婦が、庭に生えていたスイセンをニラと勘違いして餃子に調理。家族4人が食し、全員が救急搬送された。中でも70代の義母は肝機能障害を起こし、1週間後に死亡するという痛ましい結果となった。
「『ニラだと思って』という最後の言葉が忘れられません。たった1回の判断ミスが人生を奪うのです」
専門家が指摘する「3つの危険サイン」
植物鑑定士の小林麻衣子氏は、ニラとスイセンを見分ける決定的な違いとして以下を挙げる:
- 匂い – ニラは特有の強い香りがあるが、スイセンは無臭か微香
- 葉の断面 – ニラは平たいが、スイセンは筒状に丸まっている
- 根元 – スイセンは球根があるが、ニラにはない
しかし、「調理前にはこれらの確認を怠りがち」と小林氏は警鐘を鳴らす。
自治体が緊急対策
この事態を受け、厚生労働省は全国の自治体に注意喚起のチラシ配布を指示。特に問題なのは、かつて庭先に植えられていた観賞用スイセンが野生化し、知らない間に繁殖しているケースだ。
「戦前から昭和にかけて、日本中の家庭でスイセンが植えられていました。それらが半世紀以上経った今、予想外の形で凶器と化しているのです」
広がる被害、潜む危険
さらに恐ろしいのは、この中毒症状が遅れて現れる場合があることだ。東京都健康安全研究センターの調べでは、少量摂取した場合、最初は軽い腹痛だけですみ、2-3日後に急激に肝機能が悪化する「遅発型中毒」の症例が確認されている。
「春の山菜採りシーズンと重なり、より一層の注意が必要です」と同センターの担当者は訴える。実際、山菜と有毒植物を間違える事故も毎年起こっており、今年は特にスイセンの誤食が突出しているという。
あなたの庭は大丈夫?
専門家らは「家庭菜園をしているなら、周囲にスイセンが生えていないか徹底的に確認を」と呼びかけている。過去には、隣家から地下茎を通じてスイセンが侵入し、気づかない間に菜園内に混入していたケースも報告されている。
もし少しでも疑わしい植物を見つけた場合、絶対に口にせず、自治体の保健所や植物園に鑑定を依頼することが推奨されている。一見無害に見える春の緑が、死をもたらす凶器に変わる可能性を、私たちは肝に銘じる必要があるだろう。
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