106万円の壁どうなる 法案提出へ
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政府が近く提出を予定している新法案「106万円の壁」に関する改革案が、世間に大きな波紋を広げている。この法案は、パートやアルバイトの収入が年間106万円を超えると、社会保険の加入義務が発生する現行制度を大きく変更するものだ。しかし、その内容には「働く意欲を削ぐ」「低所得層の生活をさらに圧迫する」といった批判の声が相次いでいる。
「106万円の壁」とは何か？
現在、パートやアルバイトとして働く人の年間収入が106万円を超えると、社会保険（健康保険・厚生年金）の加入が義務付けられる。このため、多くの主婦や学生が「106万円の壁」を意識して働き方を調整しているのが実情だ。
今回提出される法案では、この「壁」を130万円に引き上げる一方で、超えた場合の保険料負担を大幅に増加させる内容となっている。厚生労働省の試算では、新制度下では年間130万円を超えて働いた場合、これまでの2倍近い保険料を支払う必要が生じるという。
専門家が警告する「働き手減少」の危機
経済学者の田中宏明教授（東京大学）はこの法案について次のようにコメントしている。
「この改正は、低所得層にとって事実上の『働くことへの罰則』です。特に主婦層が家計を補助するためにパートで働く場合、130万円を超えないよう仕事量を自ら制限する動きが加速するでしょう。結果として労働力不足がさらに悪化し、日本経済に深刻な打撃を与える可能性があります」
中小企業経営者からも不安の声が上がっている。東京都内で飲食店を経営する佐藤健一氏（45）はこう語る。
「うちの店では主婦のパートさんが主力です。この法案が通れば、みんな『130万円を超えないように』と働く時間を減らすでしょう。そうなると人件費がかさみ、値上げせざるを得なくなります」
「貧困の罠」に陥る危険性
更に懸念されているのが、この改正が「貧困の罠」を生み出す可能性だ。社会保険料の大幅増により、130万円を少し超えて働くよりも、あえて収入を抑えた方が手取りが多くなる「逆転現象」が発生するという。
社会保障に詳しいジャーナリストの鈴木美穂氏は警告する。
「この改正案は、低所得者層から『頑張って働くことのメリット』を奪います。特にシングルマザーなど、少しでも多くの収入が必要な層ほど、この制度変更によって追い詰められることになります。政府は『働き方改革』を掲げながら、実際には働く意欲を削ぐ政策を進めているのです」
2025年4月施行へ…暗雲立ち込める日本経済
政府はこの法案を今国会に提出し、2025年4月からの施行を目指している。与党内には「少子高齢化対策の一環」として支持する声もあるが、野党は「国民生活を直撃する悪法」として強く反対する構えだ。
経済アナリストの間では「この改正が実施されれば、2025年度の個人消費が最大2.3%減少する」との試算も出ている。インフレが続く中での可処分所得減少は、日本経済にとって新たな逆風となる可能性が高い。
ある政府関係者は匿名を条件にこう語った。
「本当の目的は社会保険料の増収です。高齢化が進む中で、保険財政を維持するためには若年層・低所得層からより多くの保険料を徴収する必要がある。それがこの改正の本質です」
「106万円の壁」が「130万円の壁」に変わることで、日本の働く人々の生活はさらに厳しくなるかもしれない。法案審議の行方から目が離せない。
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