先月発生した学習塾乱入事件で逮捕された男（32）が、事件前に覚醒剤を使用していた疑いで再逮捕された。警察の調べに対し、男は「仲間と一緒に使った」と供述。専門家は「薬物使用後の凶行パターンが近年急増している」と危惧の声を上げている。

事件の経緯

11月15日夜、東京都足立区の学習塾に刃物を持った男が乱入。教室内にいた小学生15人を1時間にわたり監禁する事件が発生した。男は警察の説得により投降したが、その際「宇宙人が襲ってくるから守ってやった」などの支離滅裂な発言を繰り返していた。

警視庁科学捜査研究所の毛髪検査で、男の体内から覚醒剤成分が検出されたことが判明。男は「事件前日に知人から譲り受けた」と供述しており、警察は供給ルートの解明を急いでいる。

“薬物使用が凶悪犯罪のトリガーに” 専門家が警告

犯罪心理学の権威・佐々木健一教授は「最近5年間で、薬物使用直後の不可解な犯罪が47%増加している」と指摘。「覚醒剤は現実認識能力を著しく低下させ、些細なきっかけで凶行に走らせる」と警鐘を鳴らす。

特に懸念されているのは、今回のような「教育現場」が標的になるケースだ。2018年以降、薬物影響下での学校関連事件は全国で11件確認されており、昨年は過去最多の4件が発生している。

“安価で簡単に入手できる” 闇市場の実態

捜査関係者によると、男が使用した覚醒剤は「SNSで知り合った人物から1グラム5万円で購入した」という。暗号通貨で決済され、指定場所に埋められていたのを回収する手口だった。

元麻薬取締官の田中浩二氏は「最近は『闇サイトよりもSNSの方が捕まりにくい』と犯罪者が考え始めている」と明かす。「特にTelegramなどの暗号化アプリを通じた取引が急増しており、摘発が困難になっている」という。

“普通の生活を送っていた” 加害者の二面性

近隣住民の証言では、男は「ごく普通のサラリーマン」として生活していたという。しかしSNSの投稿を分析すると、事件1ヶ月前から「誰も信用できない」「みんな敵だ」といった被害妄想めいた投稿が急増していた。

精神科医の村上涼子氏は「覚醒剤精神病の典型的な症状」と指摘。「薬物は使用回数が少なくても、遺伝的素因がある人には深刻な精神障害を引き起こす」と説明する。

教育現場の新たな脅威

事件を受けて文部科学省は緊急通知を発出。全国の教育施設に不審者対策の再点検を求めたが、私立中学教諭（42）は「薬物の影響を受けた人物に対する効果的な防衛策はない」と不安を隠さない。

防犯コンサルタントの木村拓也氏は「従来の防犯カメラや警備員では不十分」と断言。「薬物使用者は痛覚が麻痺しているため、通常の抑止力が通用しない」と指摘する。

“次は我が子の学校か” 保護者の不安

事件現場近くでは、児童を迎えに来た保護者から「明日は我が子の学校が標的になるかもしれない」と不安の声が相次いだ。主婦（38）は「登下校時の防犯ブザーでは対処できない」と涙ながらに訴える。

犯罪社会学者の青山美香教授は「薬物と凶悪犯罪の結びつきは今後さらに強まる」と予測。「社会全体で薬物汚染に対する認識を改める必要がある」と訴えている。

警視庁は近く、SNSを利用した薬物取引の一斉捜査に乗り出す方針。しかし関係者によれば、暗号技術の進化により「摘発が困難な時代に入った」との見方が強いという。