23区新築マンション平均1億円割る

東京都心部の不動産市場に激震が走っている。長年「1億円の壁」と言われてきた23区の新築マンション平均価格が、ついに1億円を割り込んだ。一見すると「買い時」到来と喜ぶ声も上がるが、専門家たちは「これは正常な価格調整ではない」と警告。その背景には、都心居住をめぐるある不気味なトレンドが潜んでいるという。

「異常な下落」が示す不穏なサイン

不動産経済研究所の調査によると、2023年第4四半期の東京23区新築マンション平均価格は9,850万円（前年比18.3%減）に急落。特に中央区・港区・千代田区の「都心3区」では23.7%という大幅な下落が見られた。

「この下落率はリーマンショック時を上回る異常な数値です」と語るのは、不動産アナリストの黒木翔氏（45）。「通常の市場調整なら10%前後が限度。これほどの急落は、何か別の要因が働いていると考えるべきでしょう」

「富裕層の脱出」が加速している

関係者たちの間で囁かれているのは、「ゴールド・エクソダス（黄金の脱出）」と呼ばれる現象だ。従来都心の高級マンションを支えてきた超富裕層が、ある理由から一斉に都心を離れ始めているという。

「特に外国人富裕層の動向が顕著です。昨年だけで港区赤坂の超高層タワーマンションから10世帯以上が国外転出。彼らは口を揃えて『東京が危険になった』と語っていました」

専門家が指摘する「3つの危機」

都市危機管理研究所の分析では、都心居住リスクとして以下3点を指摘している：

1. 地震リスクの再評価：首都直下地震の発生確率が30年以内に70%に上方修正
2. 大気汚染の深刻化：微小粒子状物質（PM2.5）濃度が過去最悪レベルに
3. 社会インフラの老朽化：都心部の下水管破裂事故が前年比3倍に急増

同研究所の三浦涼子主任研究員（52）は警告する。「特にタワーマンションの上層階居住者は、災害時に『現代のタワー・オブ・バベル』状態に陥る危険性があります。エレベーターが止まれば高層階は即座に孤立。実際、昨年の台風時にはあるタワマンで72時間以上の閉じ込め事故が発生しています」

「幽霊マンション」化する都心

さらに不気味なのは、購入者がいながら実際には誰も住んでいない物件が急増している事実だ。ある不動産管理会社の内部資料によれば、港区の某タワーマンションでは全582戸中、実に43%が「無人戸」（照明・水道の使用量が月1回未満）として記録されている。

「富裕層の『資産防衛』目的の購入が増え、実際の居住率が低下しています。これはコミュニティの空洞化を招き、防犯面でも深刻な問題を引き起こします。あるマンションでは空き部屋を利用した違法カジノが発覚した事例も」

「2025年問題」が迫る

業界関係者が最も懸念するのは、来年に迫った「2025年問題」だ。バブル期に建設された都心マンションの大規模修繕時期が集中し、1戸あたり数百万円規模の修繕費が発生すると見込まれている。

建築保全協会の試算では、築30年以上のマンションのうち、約17%が修繕基金不足に陥っているという。同協会の田所洋平技術委員長（58）は「特に外資系ファンドが大量購入した物件では、修繕費徴収が困難なケースが多発しています」と明かす。

暗い未来図

このまま状況が改善しなければ、23区の新築マンション価格はさらに下落が続くと予想される。しかし、それは決して「手頃になった」という朗報ではない。

経済評論家の森田剛氏（49）はこう警鐘を鳴らす。「都心マンション価格の下落は、東京という都市そのものの吸引力が失われ始めた証拠かもしれません。もしこのトレンドが続けば、10年後には空き部屋だらけの『ゴースト・タワー』が都心の景観を支配する事態も想定すべきです」

我々は今、東京の未来を決める分水嶺に立っているのかもしれない。