UAEで51.6℃観測 5月の最高更新

記録的な熱波がUAEを襲う

2024年5月、アラブ首長国連邦(UAE)で観測史上最も高い気温となる51.6℃が記録され、専門家たちから「気候変動の悪化が加速している」との警告が相次いでいます。この異常な高温は、首都アブダビから約150km離れた内陸部のアル・アイン市で観測されました。

「人が住めなくなる日が近づいている」

UAE気象庁のアリ・アル・ハマディ博士は、この記録について次のようにコメントしています。

「これは単なる記録更新ではありません。私たちが予測していた最悪のシナリオよりも2年早くこの温度に達しました。このペースで気温が上昇し続ければ、近い将来、日中は屋外で活動できない『生存不可能時間帯』が発生する可能性があります」

特に懸念されているのは、この高温が5月という夏のピーク前の時期に記録された点です。過去10年間のデータでは、UAEの最高気温は通常7月から8月にかけて観測されており、専門家たちは「気候変動の影響が予想以上に早く進行している」と指摘しています。

都市部では「ヒートアイランド現象」が加速

ドバイなどの大都市では、コンクリートやアスファルトによるヒートアイランド現象がさらに状況を悪化させています。夜間でも気温が35℃を下回らない「熱帯夜」が続き、電力消費量が急増。一部地域では停電が発生し、エアコンが使えない住民が熱中症で病院に搬送される事態も起きています。

ドバイ在住の環境エンジニア、サラ・モハメド氏は都市計画の根本的な見直しが必要だと訴えます。

「現在の都市デザインは50℃を超える気温を想定していません。窓ガラスが割れたり、道路標識が溶けたりする事例が報告されています。このままでは、夏の間は都市機能が麻痺する可能性があります」

観光業への打撃と経済的損失

UAE政府が推進する観光業にも影響が出始めています。5月の観光客数は前年比27%減と急落。ドバイの高級ホテルでは、プールの水温が40℃近くまで上昇し、利用客から苦情が相次いでいます。

経済アナリストのオマール・ファルーク氏は、長期的な影響を懸念しています。

「観光シーズンの短縮は年間数十億ドルの損失をもたらします。さらに、労働環境の悪化で建設業や外食産業の人材不足が深刻化しています。UAE経済の根幹を揺るがす事態になるかもしれません」

「50℃超え」が日常化する未来

国際気候研究機関(ICRI)の最新予測によると、UAEでは2030年までに5月の平均最高気温が50℃に達する可能性があると警告しています。同機関のシミュレーションでは、今世紀半ばには夏季の日中気温が60℃近くまで上昇する地域が出る可能性も示唆されています。

ICRIの気候科学者、エレナ・コワレフスカ博士は次のように述べています。

「中東全域が『生存限界温度』に近づいています。特に高齢者や持病のある方々にとっては命の危険があります。この地域のいくつかの都市は、将来的に居住不可能になる可能性を真剣に考慮し始めるべきです」

政府の緊急対策と「気候移民」の可能性

UAE政府は緊急対策として、日中(午前10時から午後4時)の屋外労働を禁止する法令を強化。さらに、主要都市に「冷却シェルター」を設置する計画を発表しました。しかし、専門家からは「対症療法に過ぎない」との批判も出ています。

社会学者のヤセル・アブドゥル氏は、将来的な「気候移民」の発生を予測しています。

「もし夏の気温が55℃を超えるようになれば、富裕層から国外への移住が始まるでしょう。UAEの社会構造そのものが変容を迫られる日が来るかもしれません」

記録的な熱波は、気候変動がもはや遠い未来の話ではなく、現在進行形の危機であることを痛感させます。専門家たちは「この夏、UAEで何が起きるのか、世界中が注目すべきだ」と警告しています。

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